税務調査が行われる際には、基本的には事前通知がされますが、調査の理由は説明してもらえません。そして、例外的に、事前通知がされず、調査が行われ、反面調査先にも連絡なしに反面調査が行われることがあります。
税務調査が始まって、帳簿書類の提示・提出は正当な理由がなければ、拒むことはできません。帳簿種類が私物の場合でも、事業に関連があると疑われれば提示する必要があります。
帳簿書類の預かり、帳簿種類を貸すのは強制ではありません。
事前通知
事前通知で「調査の理由」を説明してもらえるか?
法律上、事前通知すべき事項になっていないため、説明されません。
事前通知すべき事項は、国税通則法に規定されており、以下のとおりです。
- 調査を行う旨
- 調査開始日時
- 調査場所
- 調査の目的
- 調査対象税目
- 調査対象期間
- 調査対象の帳簿等
調査の目的は、事前通知すべき事項に含まれているので、説明されます。
しかし、申告書の記載内容を確認するためなど、形式的なものになり、意義があるのか疑問です。
例えば、情報があって売上に計上されているかを確認するためなどの調査の理由は説明されません。
事前通知なしに調査が行われる場合とは?
原則として、事前通知が行われます。
しかし、事前通知により、以下のおそれがあると判断された場合には、事前通知が行われないこともあります。
①違法、不当な行為により、正確な税額等の把握を困難にするおそれ
②調査の適正な遂行に支障が出るおそれ
脱税などを行っており、事前通知すると免れるケースや、現金商売などで、日々の売上が適正に計上されているかを確認するケースが該当するでしょう。
事前通知を行わないとした理由についても、説明されません。
反面調査が行われる場合、反面調査先に事前通知はされるか?
申告内容に関する取引を確認するために、取引先に反面調査を行うことがあります。
法律上、反面調査として取引先に事前通知を行う規定はありませんが、原則として、取引先に連絡した上で、反面調査が行われます。
帳簿書類の提示・提出
帳簿書類の提示・提出を拒むと罰則があるが、立証は難しい
1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されます。
調査において、全ての帳簿書類を提示・提出されないケースはほとんどなく、一部提示・提出されると、それに基づき調査します。
税務当局は、提示・提出の求めに対し、拒まれているという事実を立証しないといけません。
調査と並行して、拒まれている事実を立証するのはハードルが高いと言えます。
正当な理由がある場合、拒めるが、正当な理由とは?
正当な理由とは、災害等により帳簿書類が滅失するなど、物理的に提示・提出が困難である場合が該当します。
ほとんど該当しません。
そもそも、災害等が発生した場合、調査を行うことを控えるよう通達されます。
帳簿書類が私物の場合、断れるか?
事業関連性が疑われる場合には、断ることができません。
例えば、法人税の調査で、代表者の個人預金を確認することがあります。個人預金の口座に法人の売上が振り込まれている場合などです。
もちろん、闇雲に個人預金の通帳の提示・提出に対しては、断ることができます。
もっとも、調査において給与の振込口座を確認した上で、反面調査として銀行で個人預金の口座を確認することができます。
弁護士や医師のように職務上の守秘義務が課されている場合、断れるか?
調査担当者には調査を通じて知った秘密を漏らしてはならない義務、守秘義務が課せられているので、拒むことはできません。
帳簿種類の預かり
帳簿書類の預かりは強制か?
以下のような場合には、帳簿書類を預かって調査をした方が調査を円滑に実施でき、納税者の負担軽減からも望ましいと考えられています。
- 納税者の事務所に十分なスペースがない場合
- 帳簿書類が多いため、確認に時間を要する場合
帳簿書類を預かる必要性を説明し、納税者の理解と協力のもと、承諾を得て行われます。
したがって、強制的に帳簿書類を預かる事はありません。
帳簿書類が少ないにもかかわらず、調査担当者の調査経験が浅く、帳簿書類を預かって税務署等で確認したいというのは、上記の場合に該当しないでしょう。
申し出れば、帳簿書類を返してもらえるか?
法律上、帳簿書類を預かる必要がなくなったときは遅滞なく返すことになっています。
以下の場合には、帳簿書類が返されないことがあります。
- 帳簿書類が大量にあり、そのコピーに時間がかかる場合
- すぐに返すと調査の遂行に支障がある場合
返されないことに納得できない場合、税務署などに再調査の請求または国税不服審判所に審査請求をすることができます。