個人編(2020年度税制改正大綱)
確定拠出年金
確定拠出年金の掛け金の拠出期間は60歳までですが、企業型は70歳、個人型は65歳まで延長されます。
企業型を導入する企業は、個人型と併用する場合には、規約を設けなければなりません。
既に上限額まで掛け金を支払っている従業員がいると、個人型加入により上限額を下げないといけないため、規約を結ぶのが難しくなります。
上限額を維持したまま、企業型と個人型を併用できるようになります。
従業員が企業の拠出金と同額の掛け金を拠出できる企業型があります。その従業員は個人型を選択できませんでしたが、選択できるようになります。
働く60歳代が増えており、公的年金の給付水準が下がるという背景から、私的年金である確定拠出年金が拡充されます。
NISA
新NISA
NISAの期限が、2023年までから2028年までに5年間延長されるとともに、2024年に2階建ての制度になります。
リスクの低い投資信託等を対象として20万円を投資した人だけが、2段目の従来の株式等を対象として102万円の投資を行うことができます。
現行もNISAと積立NISAは選択制ですが、新NISAも同様です。
積立NISA
積立NISAの期限が、2037年までから2042年までに5年間延長されます。
2023年までに投資を始めると、20年間非課税の恩恵が受けられます。
国外財産調書
新たに国外銀行預金の入出金、海外不動産、証券の購入売却等の取引資料の保管が要請されます。
国外財産調書の提出義務者(5,000万円超の海外資産を有している個人)を対象とし、2020年分以降の所得税、2020年4月以降取得する財産に係る相続税に適用されます。
税務調査でその取引資料を提出しない場合、国外財産調書記載分には追加課税が5%から10%になります。
提出しても、記載されていない分には現行と同じく追加課税は15%です。
提出しないで、記載されていない分には追加課税は20%になります。
ひとり親控除
寡婦控除が未婚のひとり親にも適用されます。寡婦控除は配偶者と離婚、死別した人が対象でしたが、結婚してない人も含まれることになります。
年収678万円(所得500万円)以下の人で35万円の所得控除ができます。現行の寡婦控除の男女別々の要件、控除額もこれに統一されます。
エンジェル税制
所得控除のベンチャー企業の要件を設立後3年未満から5年未満にします。
企業編(2020年度税制改正大綱)
ベンチャー投資
オープンイノベーション促進税制の創設です。
大企業が、2020年4月から2022年3月までに、設立10年未満の日上場企業に1億円以上出資した場合、出資額の25%相当を所得から控除することができます。
中小企業は1千万円以上出資すると対象となります。海外の企業に出資する場合は出資金が5億円以上必要になります。
大企業のグループ会社への出資は対象外であり、出資から5年以内に手放した場合、優遇を受けた分を返還することになります。
連結納税制度
親会社がグループ会社全てを取りまとめて申告、納税しているのをグループ会社各社で申告、納税するようになります。
グループ会社の1社で間違いがあるとグループ全体の計算をやり直し、事務負担が発生することから、違いがあった会社のみが修正するようになります。
M&A節税対策
ソフトバンクグループが行った以下の節税の対策です。
- 海外子会社を買収する。
- 海外子会社から、その子会社の事業会社の株式で多額配当を受ける。
- 多額配当をすると、海外子会社の価値が下落する。
- 他の子会社に海外子会社の株式を売却すると、赤字が発生する。
過去10年以内に買収した子会社から子会社の株式簿価の1割を超える配当を受ける場合、税務上株式簿価を引き下げることになります。
領収書等のデータ保存
2020年秋からクラウド上で領収書データを発行、保管することができるようになる予定です。
経理の事務負担が軽減し、紙保管のスペースが不要になりそうです。
大企業の交際費減免措置廃止
資本金100億円超の大企業を対象として、一人当たり5千円を超える飲食代について、その半分を損金に計上することが2019年度末に廃止になります。
2020年度税制改正大綱で見送られた項目
2021年度以降の税制改正大綱に入るかもしれない項目になります。
退職金課税
勤続年数が20年までは年間40万円、勤続年数が20年を超えると、超えた年数に70万円、その合計金額が所得控除されます。
働き方の多様化にあわず、終身雇用が有利な制度設計になっています。
金融所得課税
配当や譲渡益は金額にかかわらず税率が20%であり、富裕層ほど税負担が下がることになります。
所得税は所得が高いほど税率も上がります。