節税目的で取得した不動産については、路線価での相続評価が許されない!

節税目的で取得した不動産については、路線価での相続評価が許されない! 節税

東京地方裁判所が令和元年8月27日に判決した相続税の事案が話題となりました。

財産評価通達には、不動産の相続税評価を路線価で行うことが規定されています。

通達は課税庁の職員が業務を行う上で順守するものであり、納税者が拘束されるものではありませんが、多くの納税者は相続した不動産を通達である路線価により評価して申告しています。

ところが、課税庁は自らが定めた通達の路線価による評価を否定し、不動産鑑定士が鑑定した評価で更正しました。

財産評価通達6には、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」と規定されているからです。

東京地方裁判所もこれを認めました。

納税者は納得いかず、東京高等裁判所に控訴しましたが、令和2年6月24日に棄却されています。

なぜ路線価による評価が認められなかったのでしょうか。

相続税事案の概要

被相続人を親、相続人を子として、時系列で簡単に紹介します。

平成21年1月 親が杉並区のマンション(土地建物)を8.4億円(銀行借入6.3憶円)で購入

平成21年12月 親が川崎市のマンション(土地建物)を5.5憶円(銀行借入3.8憶円)で購入

平成24年6月 親が亡くなり、子が上記2つのマンションを相続

平成25年3月7日 子が杉並区のマンションを5億円で売却

平成25年3月11日 子が杉並区のマンションを2億円、川崎市のマンションを1.3億円で路線価の評価により申告(借入金があり、相続税が発生しません。)

平成28年4月 課税庁が杉並区のマンションを7.5憶円、川崎市のマンションを5.2億円で、不動産鑑定の評価により更正

【裁判所の判断】租税負担の公平を害する路線価評価は許されない!

財産評価通達6の「著しく不適当と認められる」場合とは、災害などの時価評価に影響を及ぼす場合に限られ、時価評価に影響を及ぼすことのない、納税者の節税目的や租税回避の目的といった主観的な要素、相続開始の前後の一連の行為は考慮すべきではないと納税者は主張しました。

しかし、裁判所は、租税平等主義という考え方を前提として、通達に定めていない評価方法で評価することは原則として許されないとしながらも、全ての納税者の全ての財産の評価において、形式的に平等を貫くことによって、租税負担の公平を著しく害することが明らかである場合には、他の合理的な方法によって評価することが許されるものとしました。

路線価による評価額は、不動産鑑定評価額の4分の1にとどまっており、不動産の購入、借入を行わなかった他の納税者との間で租税負担の公平を著しく害することが明らかであり、通達に定めていない評価方法である不動産鑑定評価によって評価することができるとしました。

【疑問点と実務に生かす処方箋】早いうちに不動産の相続税対策を行う!

実務において時価の算定が難しいため、路線価による評価を設定しているにもかかわらず、相続税対策を行った場合には、不動産鑑定による評価で課税しますという考え方はおかしくないだろうか。

また、相続税対策を行わなかった納税者との間で公平を保つために、今回の事案の納税者を不公平に扱うことが正当化されるという裁判所の判断にも疑問が残る。

課税庁の研修資料には、他の合理的な方法により評価する場合には、通達による評価額と他の合理的な方法による評価額との間に著しい乖離が生じたことにつき、納税者の行為が介在していることに留意すると規定されています。

今回の事案では、以下のような納税者の行為が介在し、節税を企画したという事実が存在していたと認められたのではないでしょうか。

  1. 亡くなる3年前に借入による購入
  2. 相続して1年も経たないうちに売却しており、売却金額も申告時の相続税評価額と乖離
  3. 銀行借入の稟議書に「相続対策」と記載

以下のような対応をします。

1点目については、早いうちから相続税対策を済ませておきます。亡くなるから相続ではなく、今からでも早くはありません。

2点目については、相続してから時効である5年を過ぎるまで売却しないことです。

3点目については、賃貸目的等の目的を明確にしておきます。

不動産賃貸を長年行っている人が相続税対策をしている場合には、このような課税を受けないと考えています。

長い時間をかけて相続税対策を行うことの重要さをこの判例により改めて感じました。

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