不動産投資の空室リスクを避けるために、物件を買うエリアの人口の増減を考慮する必要がありあます。
今回は、東京23区の人口と公示価格の推移から、将来推計人口を使って、将来の不動産価格を予測してみました。
私は不動産投資では家賃収入であるインカム・ゲインを得られことを重視しますが、副次的に価格上昇であるキャピタル・ゲインも少なからず期待しています。
東京23区の不動産価格(公示価格)
不動産価格(公示価格)の推移

東京23区の公示価格の推移から以下のことがわかります。
- 昭和の終わりから平成の始まりにかけて、バブル景気と崩壊で大きく変動
- 平成20年頃に、ITバブルが終焉し、リーマンショックで小さく変動
今年に入って、首都圏の新築マンションの価格が、バブル期を超えたというニュースがありましたが、公示価格はまだ低くなっています
不動産価格の上昇によるキャピタル・ゲインを得る場合には、昭和の終わりのような急激に上がるタイミングを注視し、完全に上がりきる前に売る必要があります。
昭和の終わりのバブル景気は「プラザ合意」がきっかけになったと言われています。
この時は、アメリカの金利が高く、世界中から米ドルにお金が集中して、1ドル250円近く、円安ドル高で推移していました。
円安になると、日本企業の輸出売上は大きくなりますが、逆に、アメリカ企業の輸出売上が少なくなります。
アメリカの貿易収支(輸出額-輸入額)の赤字が大きかったため、アメリカと日本は協調して為替介入を行いました。
その結果、1年で1ドル150円近くまで下がり、急激な円高ドル安が進むことで、日本の景気が悪くなりました。
その対策として、日銀が金利を引き下げると、株式や不動産の価格が上がって、バブル景気が到来しました。
不動産価格は為替の影響を受けます。
一般に円安になると不動産価格は上がり、円高になると下がると言われています。
円安になると、企業の輸出売上が大きくなり、内需も潤い、株式や不動産の価格が上がるためです。
円高で不動産が安くなったタイミングで買って、円安で高くなったタイミングで売ることが一つの目安になります。
不動産価格(公示価格)が最も上がった区はこの3区!
東京23区の区ごとの公示価格の上昇率は異なります。
リーマンショックの影響を除くため、平成24年以降の東京23区の区ごとの公示価格の推移をみていきます。
平成24年の公示価格を100とした場合に、10年後の令和4年の公示価格がどのくらいになっているかを計算しました。
1.4倍エリア | 中央区 | 港区 | 千代田区 | |||||
144 | 143.7 | 140.2 | ||||||
1.3倍エリア | 文京区 | 豊島区 | 荒川区 | 品川区 | 目黒区 | 台東区 | 新宿区 | |
133.7 | 133.3 | 133.1 | 132.5 | 131 | 130.3 | 130.2 | ||
1.2倍エリア | 渋谷区 | 北区 | 江東区 | 墨田区 | 中野区 | 杉並区 | 板橋区 | 世田谷区 |
129.1 | 128.5 | 127.2 | 122.7 | 122.4 | 122 | 120.8 | 120.4 | |
1.1倍エリア | 足立区 | 江戸川区 | 大田区 | 練馬区 | 葛飾区 | |||
119.4 | 119 | 118.7 | 115.7 | 112.6 |
以下の特徴があります。
- 都心3区である中央区、港区、千代田区が1.4倍を超えて上昇
- 都心5区に含まれる新宿区、渋谷区は1.3倍程度
- 東京23区の全ての区で1.1倍を超えて上昇
- 城東、城西エリアに比べて、城北、城南エリアの方が高い傾向にある
10年前に東京23区の不動産を買っていたら、不動産価格は10~40%上昇し、キャピタル・ゲインが得られたということになります。
東京23区の人口
人口の推移
不動産投資では空室リスクを抑えるために、物件を買う際に、そのエリアの人口の増減を考える必要があります。
部屋は単身者や家族といった世帯に貸し出すため、不動産投資では人口の増減について世帯数で考えます。

東京23区の人口・世帯数は右肩上がりで着実に増えています。
コロナ禍の影響により、東京都の人口が転出超過になりましたが、一時的なものです。
外国人が入国できないことによる影響が大きいです。
テレワークや在宅勤務の機会が増えたとしても、都心の利便性を考えると、東京23区をはじめとした首都圏への一極集中は続くはずです。
人口が最も増えた区はこの3区!
東京23区の中で人口の上昇率は異なります。
平成7年の人口を100とした場合に、令和3年の人口がどのくらいになっているかを計算しました。


公示価格と同様に、都心3区である中央区、港区、千代田区の人口が増えています。
次いで、江東区が増えています。豊洲に多く建設されたタワーマンションが影響しています。
他の区の上昇率はそれほど変わらないので、表示を省略しています。
都心3区の公示価格と人口の上昇率は、いずれも高いという結果になっていました。
東京23区の人口と不動産価格(公示価格)は相関しているか
リーマンショックの影響を除くため、平成24年から令和3年までの10年間の公示価格と人口の相関関係を見ていきます。
先ほどは、世帯数で人口の推移を確認しましたが、ここでは人口数を使います。将来推計人口から不動産価格を予測しますが、市区町村別の世帯数のデータがなく、人口数のみだからです。
東京23区の公示価格と人口は以下のとおりです。
H24 | H25 | H26 | H27 | H28 | H29 | H30 | H31 | R2 | R3 | |
公示価格 | 484,000 | 478,000 | 504,800 | 518,600 | 524,100 | 549,100 | 572,300 | 601,300 | 631,300 | 631,400 |
人口 | 8,591,695 | 8,966,891 | 9,016,342 | 9,102,598 | 9,205,712 | 9,302,962 | 9,396,597 | 9,486,618 | 9,570,609 | 9,572,763 |
エクセルのCORREL関数で相関係数を計算することができます。
Excelのデータで、B2:K2が公示価格、B3:K3が人口のセル範囲になります。
CORREL(B2:K2,B3:K3)=0.92
0.9を超え、公示価格と人口には非常に強い相関があります。
1に近づくにつれて相関が強くなり、一般的に、0.7を超えると強いと言われています。
同様に、東京23区の区ごとに相関係数を計算すると、荒川区の0.1を除いて、他の22区は全て0.7を超えており、相関が強くなっていました。
東京23区で不動産価格が最も上がる区は○区!
先ほどの東京23区の公示価格と人口のデータから、近似曲線の式を求めます。
エクセルで散布図を作成し、近似曲線の式を表示させることができます。

散布図を見ると、一目瞭然で相関が強いことがわかります。
近似曲線は「y=0.169638x-1014785」になっています。
yが公示価格で、xが人口であるため、xに東京23区の将来推計人口をいれることで、将来の東京23区の不動産価格を予測することができます。
近似曲線の式についても、エクセルのINDEX関数とLINEST関数を使って、求めることができます。
- INDEX(LINEST(B2:K2,B3:K3),1,1)=0.169638
- INDEX(LINEST(B2:K2,B3:K3),1,2)=1014785
将来推計人口をxにいれると、不動産価格を予測することができます(将来推計人口は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」)。
2025年 | 2030年 | 2035年 | 2040年 | 2045年 | |
将来推計人口 | 9,632,446 | 9,724,959 | 9,767,548 | 9,759,301 | 9,702,134 |
不動産価格 | 619,239 | 634,933 | 642,158 | 640,759 | 631,061 |
令和3年比(%) | -1.9 | 0.6 | 1.7 | 1.5 | -0.1 |
2035年を境に東京23区の不動産価格は下がっていますが、23区全てで同様の傾向にあるかをみていきます。
東京23区別に関数を使って近似曲線の式を求めて、将来推計人口から不動産価格を予測しました。
令和3年の不動産価格に比べた上昇率は以下の通りです。

東京23区の中でも、不動産価格が上がる区と下がる区の2つに大きく別れました。
東京23区で不動産価格が今後最も上がる区は港区でした。
人口と公示価格には相関があるだけで、必ずしも「人口が多い」ので「公示価格が高く」なる因果関係があるわけではなく、利便性や住みやすさ等の他の要因も関係している可能性があるということに留意しておく必要があります。