不動産投資で所得金額が大きくなると、法人を設立して、法人に所得を帰属させることで節税することができます。
不動産投資の法人化のメリット
不動産投資で法人化によるメリットをあげると以下の通りです。
- 税率差を利用した税負担の軽減
- 役員報酬の費用計上による所得圧縮と所得分散
- 給与所得控除による低所得化
- 複数法人所有による所得分散
- 減価償却費の任意償却による利益操作
- 生命保険、中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)による費用の先取り
- 自己負担10%で社宅に住む
- 出張手当・日当、役員退職金は受けとった側も非課税
- 決算期のズレを利用した所得移転
- 青色欠損金は繰越よりも繰戻を利用
- 短期間での売却、他の所得との通算も可能
- 事業承継を見据えた相続税対策
ここでは長くなるので、1つ1つを詳しく説明しませんが、1つ目の税率差による税負担の軽減が最も大切です。
税率差は法人化するタイミングの指標にもなります。個人に適用させる所得税率は累進税率ですが、法人税率は一定税率ですので、法人税率を超えるタイミングで法人化すべきといえます。
所得税は控除額があるので、控除後の税率を計算する必要があります。
所得金額 | 所得税率 | 控除額 | 控除後 所得税率 | 法人税率※ |
195万円以下 | 5% | 0円 | 5% | 15% |
330万円以下 | 10% | 97,500円 | 7.0%以下 | 15% |
695万円以下 | 20% | 427,500円 | 13.8%以下 | 15% |
800万円以下 | 23% | 636,000円 | 15.0%以下 | 15% |
900万円以下 | 23% | 636,000円 | 15.9%以下 | 15.9%以下 |
1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 | 24.4%以下 | 19.5%以下 |
4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 | 33.0%以下 | 21.5%以下 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 | 33.0%超 | 21.5%超 |
所得金額が900万円以下までは同じ税率ですが、900万円を超えると、所得税率の方が高くなり、法人化した方が得ということになります。
税負担の軽減は、お金の流出を抑えることができる節税ですので、一番最初に考えるべき節税と言えます。
不動産投資の法人化のデメリット
不動産投資で法人化によるデメリットをあげると以下の通りです。
- 法人設立費用の発生
- 住民税の均等割の税負担が増加
- 社会保険料の負担増
- 確定申告の煩雑さから税理士費用発生
もろもろの費用が発生しますが、法人化のメリットの方が大きいです。
1の設立費用については、合同会社経由で株式会社を設立すれば、数万円ですが節約することができます。
公務員の不動産投資で法人化は可能か
公務員は国民全体の奉仕者として働くという前提があります。
公務員が、代表者や役員として会社を経営したり、会社の従業員として働いたりすることはできません。
公務員の職務と会社との間に利害関係が発生するおそれがあるので、兼業は禁止されています。
利害関係とは簡単にいうと手心を加えることです。
利害関係とは、免許、許認可、検査、税の賦課、補助金の交付、工事の請負、物品の購入等の契約行為、不利益処分や行政指導等の対象であるものをいいます。
国家公務員の兼業について(概要)平成31年(2019年)3月 内閣官房内閣人事局
国家公務員約58万人、地方公務員約274万人で、日本の企業367万社もあり、公務員の職務と会社との間に利害関係が発生するのだろうか?と思われる方もいらっしゃると思います。
利害関係が発生しないように兼業ができる仕組みを作ればよいのですが、職員か多いので一人一人を把握しておくことは不可能ですので、全面的に兼業を禁止しています。
公務員個人が不動産投資をしていて、法人化によって不動産を法人に所有させ、不動産所得を法人に帰属させることはできません。
公務員の不動産投資で妻名義の法人化は可能か
それなら、公務員本人ではなく、妻や親族を代表者にした会社で不動産を所有し、不動産所得を会社に帰属させることは可能でしょうか。
理論的には可能です。
不動産投資の副業がばれないように、妻や親族の名義を借りて不動産投資を行うある種の名義貸しみたいなスキームがあります。
しかし、公務員本人が実質的に不動産投資が行っている場合も、公務員本人が行っているとみなされることが、なお書きで補足されています。
「自ら営利企業を営むこと」(以下「自営」という。)とは、職員が自己の名義で商業、工業、金融業等を経営する場合をいう。なお、名義が他人であつても本人が営利企業を営むものと客観的に判断される場合もこれに該当する。
人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について 第1項関係の4
当然と言えば当然です。
公務員本人が、物件を買うのに立ち会ったり、賃貸経営に参加したりしていれば、実質的に不動産投資を行っていると認められます。
懲戒処分の対象になるので止めておくべきです。