税務調査の連絡は急にきます。拒否することはできるのでしょうか?
税務調査における国税調査官の質問検査権
調査官には質問検査権が与えられるいるので、税務調査で納税者に質問し、帳簿書類の提示を受けることができます。
現金監査や金庫等の現物確認調査も質問検査権があるからできます。納税者や税理士は嫌がりますが、申告に反映され、仕事に使っている現金や物ですので、確認されても仕方ありません。
個人事業主が法人成りしたような納税者は、プライベートと混同されているケースが多いですが、普段から仕事とプライベートは分けて管理しておくべきです。もっとも、分けていなくても、調査官にはプライベートな面を含めて、業務上知ったことについては守秘義務があります。
質問検査権があるので銀行や取引先に反面調査をすることもできます。
調査官は常に身分証を携行して、納税者等から請求があったときには、見せる必要があります。税理士も、税務調査等の際に調査官に税理士証票を見せる必要があります。
税務署の調査では、調査官は真面目に身分証を見せますが、国税局の大企業の調査等では、名刺の交換で済ませることが多いです。
税務調査は任意調査であるのに拒否した場合には罰則がある
税務調査は任意調査ですが、拒否することはできません。
あくまでも、国税局査察部が行う国税犯則取締法に基づく犯則調査(査察調査)が強制調査であるのに対して、通常の税務調査が任意調査と呼ばれているに過ぎません。
任意調査であっても、税務調査を拒否した場合には、罰則が適用されます。警察官の事情聴取に拒否しても罰則がないので、調査官に与えられている質問検査権は大きな権力です。
第百二十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一(省略)
二 第七十四条の二、第七十四条の三(第二項を除く。)若しくは第七十四条の四から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)の規定による当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検査、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
三(省略)
国税通則法
税務調査に臨む調査官に対して横柄な態度をとる納税者や税理士はいますが、少なくとも、私は、税務調査を完全に拒否するような納税者を見たことがありませんし、聞いたこともありません。現実的に罰則が適用される例もありません。
税務調査を拒否した場合の立証責任は国税調査官にある
税務調査を拒否したことを立証する責任は、調査官にあります。
調査官が、税務調査で申告内容を確認して、異なるときは、正しい金額で更正することになっているからです。
調査官にとって、調査拒否を立証したところで何の得にもなりません。むしろ、事務が増えるだけです。簡素な公務執行妨害に対して、警察官の書類を作成する事務負担が多くなるのと似たようなところでしょうか。