税務調査における国税調査官の証拠資料収集と納税者の対応法

税務調査における国税調査官の証拠資料収集と納税者の対応法 国税調査官

調査官は請求書、領収書等の取引書類を証拠資料として収集し、必要に応じて、質問応答記録書を作成し、証拠化を図ります。その一方で、納税者ができることは、税務調査の経過を記録し、残しておくことです。

国税調査官の証拠資料の収集

取引から申告までに作成される書類は、取引書類→帳簿→決算書→申告書です。

通常、帳簿に入力された内容は申告書に反映されるので、申告内容が誤っている場合の原因は、以下のように取引書類から帳簿に正しく転記されていことなどです。

  1. 取引書類があるのに、そもそも帳簿に記載されていない。
  2. 日付、勘定科目、金額が帳簿に誤って転記されている。
  3. 減価償却、前払未払等の決算期末の処理が漏れている。

2のケースの金額誤りでは、例えば、取引先からの請求書が200万円となっているのに、帳簿の売上に100万円と記載されていれば、売上が100万円少なく計上されていることになります。

この場合、帳簿は会社が作成した証拠資料であり、取引書類である請求書は信憑性のある証拠資料になるので、調査官は両方を証拠資料として収集します。

税務調査で更正を受ける場合には、理由書で誤った内容が通知されます。理由書の文章の流れは、会社取引→正しい処理→その差として是正する処理になります。

帳簿が会社行為、取引書類が正しい処理を裏付ける証拠資料になります。

取引書類は本人だけではなく、相手がいる前提で作成されるので誤っていることは少ないですが、取引書類自体が偽装されている場合には、その信憑性を反面調査、銀行調査等で確認します。

国税調査官の質問応答記録書の作成

取引書類である請求書が残ってない場合であっても、事実関係を記録として残すために、調査官が作成するのが質問応答記録書です。調査官の質問に対して、納税者等が回答した内容を記録した書類です。

先ほどの例ですと、金額が200万円の請求書がなく、単に帳簿の売上に100万円と記載されている場合です。実際は200万円の取引であるのに、売上を100万円少なく計上していたとします。

請求書を発行した取引先に反面調査をしたところ、売上200万円の請求書が出てきた場合には、納税者のみならず、取引先に対する質問応答記録書を作成します。

調査官は調査報告書と呼ばれる書類を作成して、上司に報告するかたちで事実関係を残すことができますが、納税者等とのやりとりを記録した質問応答記録書の方が信憑性が高くなります。

誤っている直接の根拠となる取引書類がない場合であっても、課税要件事実が記録されている質問応答記録書は、課税処分の根拠となる証拠資料になります。

調査官が作成した質問応答記録書の写しをもらうことはできませんが、質問応答記録書は情報公開請求の対象になっているので、請求することができます。

このことを知らない調査官や税理士も多くいます。分かりにくい突っ込まれそうな質問応答記録書が作成されているケースもあります。

国税組織の研修では、会計や税法を学び、判例に基づく事例を討議しますが、質問応答記録書の作成など、実務に即した税務調査のイロハを学ぶ機会がないので、そのようなカリキュラムが必要だと個人的には思っています。

納税者の税務調査経過の記録

調査官が取引書類を証拠資料として収集し、質問応答記録書を作成するのは、税務調査で更正するためだけでなく、争いになった場合に裁判の証拠として必要になってくるからです。

一方、納税者側は、手元に証拠資料が保管されているので、収集の必要はなく、調査経過を記録として残しておくことが大切です。調査経過の記録は言った言わないの証拠になります。

争点については、調査官は頻繁に質問してきます。争点になる調査経過については、記録しておくことが好ましいですが、争点になるかどうかは後にわかることなので現実的には難しいです。

納税者が録音で調査経過を残すことは、法律で禁止されておらず、証拠能力としても疑われるものではありません。

ただ、調査官に録音してよいかどうかと聞くと、税務調査の記録が第三者に流出した場合に、守秘義務違反になるという理由で断られます。断ることが正しいとされた判例もあるので、面と向かって了承を得ることはできないと考えてください。

調査官が適正に調査をしていれば、録音されていてもやましいことはありませんし、録音でなくメモ書きであっても、情報は漏れます。

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