税務署職員として働くと、税理士になれると聞いたことがあると思います。
私は税務署職員として10年働き、税理士試験が免除されました。
税務署職員は会計科目に合格しておいて、10年で税理士になっておくべき理由をお伝えします。
税務署職員になると、いつ税理士試験が免除になるか
10年で税法科目免除
所得税、法人税、相続税、贈与税、消費税若しくは酒税の賦課に関する事務に10年以上従事すると、税法に属する科目のうち国税が免除されます。
第八条 次の各号のいずれかに該当する者に対しては、その申請により、税理士試験において当該各号に掲げる科目の試験を免除する。
四 官公署における事務のうち所得税、法人税、相続税、贈与税、消費税若しくは酒税の賦課又はこれらの国税に関する法律の立案に関する事務に従事した期間が通算して十年以上になる者については、税法に属する科目のうち国税に関するもの
税理士法8条1項4号
税務署職員は採用され、所得税、法人税、資産税の調査事務に携わることが多いので、10年経験すると、国税に関する税法科目が免除されます。
地方公務員でも地方税の賦課等に関する事務に従事すると、免除されるのはあくまでも地方税に関する科目ですので、税理士試験の必須科目である所得税法または法人税法に合格する必要があります。
税務署職員は国税に関する科目が免除されるので、税理士試験の税法科目がすべて免除されます。
この時点で、簿記論と財務諸表論の会計科目を持っていると、税理士になることができます。
23年で会計科目免除
所得税、法人税、相続税、贈与税、消費税若しくは酒税の賦課に関する事務に23年以上従事すると、会計学に属する科目が免除されます。
第八条 次の各号のいずれかに該当する者に対しては、その申請により、税理士試験において当該各号に掲げる科目の試験を免除する。
十 次に掲げる者で、官公署における国税若しくは地方税に関する事務を管理し、若しくは監督することを職務とする職又は国税若しくは地方税に関する高度の知識若しくは経験を必要とする事務を処理することを職務とする職として財務省令で定めるものに在職した期間が通算して五年以上になるもののうち、国税審議会の指定した研修(財務省令で定める要件を満たす研修のうち、国税審議会が税理士試験の試験科目のうち会計学に属する科目について前条第一項に規定する成績を得た者が有する学識と同程度のものを習得することができるものと認めて指定したものをいう。)を修了した者については、会計学に属する科目
イ 第四号から第六号までに規定する事務に従事した期間が通算して二十三年以上になる者
税理士法8条1項10号イ
財務省令は税理士法施行規則のことです。
最初の財務省令で定める職は、税務署や国税局における国税調査官等を指します。
財務省令で定める要件を満たす研修には5つの要件があり、会計科目を習得するのに十分な時間が確保されており、試験に合格することが終了要件となっている研修等です。
税務署や国税局で国税調査官として働く税務職員には、そのような研修が用意されています。
所得税、法人税、資産税の調査事務に携わり、23年経験すると、税理士試験の会計科目が免除されます。税法科目の免除と合わせて、税理士試験自体が免除され、税理士になることができます。
税務署職員(国税専門官)は10年で税理士になるべき
税務署職員として働き、安定した公務員として給与を受け取って、将来は税理士になりたいと思っている人が多いかもしれません。
税務署職員として働いた経験が将来税理士になったときに役立つこともあります。
税務署職員の大学卒業程度は国税専門官としての採用になります。
国税専門官として新卒で採用され、23年たつと45歳になります。国税専門官の受験資格は30歳までで、新卒で採用されている人も意外と少なく、50歳やそれ以上の歳でようやく免除になる人もいます。第2のキャリアを築くのには遅い気がします。
第2のキャリアを築くのは税法科目が免除される10年、年齢にすると35~43歳が理想です。
それまでに会計科目である簿記論や財務諸表論を勉強し、合格しておけばよいのです。税務署職員になってからでも勉強はできますが、時間のある学生の頃に勉強し、合格しておきたいところです。
国税専門官の研修の中でも、簿記論や財務諸表論の試験があるので、前もって勉強しておけば、相乗効果があります。
働き方も組織から個人に切り替える絶好のタイミングではないでしょうか。定年後に税理士として働くには年齢からして行動力が衰えています。
一時的には収入が下がるでしょうが、定年後も働ける税理士に周りより早くなっておくのも、人生の有効な選択肢の一つです。
税理士試験免除の決定通知書が届く
私は、税務署、国税局、国税庁で勤務してきました。10年たってから税理士試験免除申請書を、簿記論と財務諸表論の合格結果通知書とあわせて、人事課に提出しました。
4か月後に国税審議会から税理士試験免除が決定された通知が届きました。
あわせて、所属区域の税理士会を通して、日本税理士会連合会の税理士名簿に登録する必要があること、離職前一年間扱っていた事件について、離職後一年にその事件に係る税理士業務をやると罰則や懲戒処分の対象となることのお知らせも届きました。
税務署職員として働いた結果、税理士になれるというのは、税理士試験を勉強して合格することに比べて簡単ではないか、という批判があります。なくなるのではないかという噂もあります。
そんな中で、税理士試験免除決定通知書が手元に届き、税理士になれるキップを得たことに安堵しました。いつ辞めてもよいという気持ちから、普段の仕事にも積極的に挑戦することができています。